ジョン・スミスのまともな投資日記

「普通の人」ジョン・スミスが、「そこそこ儲ける」ための方法を試行錯誤する日記です。

【IPO研究】SBIのIPOチャレンジポイントの今後――インフレはどこまで続く?

 SBI証券のIPOは、資本数百万以下の零細投資家には、当選不可能と言えます。それにも関わらずSBI証券のIPOが人気を集めている理由は、「IPOチャレンジポイント」制度です。万が一ご存知でない方は、まずSBIのHPでご確認ください。

IPOチャレンジポイントとは

新規上場株式(既上場銘柄の公募増資・売出は除く)のブックビルディング後の抽選・配分に外れた回数に応じてIPOチャレンジポイントが加算されます。
次回以降のIPOお申し込み時に、IPOチャレンジポイントをご使用いただくことにより、IPOが当選しやすくなるSBI証券のポイントプログラムサービスです。

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  IPOチャレンジポイントは、落選すると1Pもらえ、ポイントを使用して当選するとなくなります。したがって「申し込み続ければいつかは必ず当たる」わけです。

 しかし、「いつか」とは、いつなのでしょうか? いつかは当たる?、でもそのころには「われわれはみんな死んでいる」(J.M.ケインズ)?

  …今回はそんなお話です。

1.IPOチャレンジポイント使用の戦略

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 闇雲にチャレンジポイント使うと、ボーダーが低い、ソフトバンクとかSBIインシュアランスとかのハズレ銘柄を当てることになります。こうした銘柄はマイナスリターンでした。

 まず公募割れしなさそうな銘柄にチャレンジポイントをつぎ込む*1のは大前提として、戦略は大まかには3通りあると思います。

 

①大量に貯めて、S級かつ複数セット配分の銘柄を狙う

②ほどほどに貯めて、A~B級銘柄を狙う

③C級銘柄も含めて、公募割れしなさそうな銘柄は全部狙ってみる

 

 後に述べるように、①>②>③の順に、1ポイントあたりの期待利益が大きくなる傾向があります。スミスも、これまでは「戦略①」を取って来ていました。

 しかし、こうした戦略のどれが「本当に有効な」IPOチャレンジポイントの使い方なのでしょうか。というのも、いくらポイントの単価が高くても、当選しなければ0円だからです。

 

2.IPOチャレンジポイントを有効に使うために…

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⓪大前提:必要ポイント数は「だいたい」期待利益に比例する 

 IPOチャレンジポイントのボーダーラインは、「だいたい」期待利益に比例すると考えて良いです。つまり、儲かる案件ほど必要なポイント数が増えます。現在、IPOチャレンジポイントの単価はだいたい1000円くらいと言われています。もし必要なポイント数が期待利益に完全に比例するのであれば、どの銘柄でチャレンジポイントを使っても同じ価値になります。もちろん、できるだけボーダーぎりぎりで使えるかどうか(=IPOポイントを使い過ぎないようにする)という問題はありますが。

 しかし、実際には「完全に」比例するわけではありません。この比例関係が崩れて、より「お得になる」(=ポイントの単価が上がる)時があります。それは、どんな時でしょうか?

 

①複数枚セットの銘柄を狙う

 IPOチャレンジポイントの抽選は「複数枚」配分されることがあります。100株当たりの利益が同じでも、より多くの配分がもらえる銘柄の方が、期待利益が大きくなります

 どの銘柄が複数枚配分になるのかは、大体わかるようです。例えばですが、「ipoチャレンジポイント  ボーダーライン」などで調べれば、すぐに予想サイトが見つかります。スミスにはどうやって調べているのかわかりませんが、結構高い精度で的中しているようです。

 ただ、複数枚配分の場合、期待利益が上がって&配分人数が減って、IPOチャレンジポイントのボーダーも上がる傾向にあります。期待利益が大きくなると、それに比例して、人々が「使ってもよい」と思うIPOチャレンジポイントも増えるからです。

 ただ、セット枚数を把握し、必要ポイント数を計算して申し込んでいる人はそれほど多くないと思います。その結果、比例関係が崩れて「お得になる」可能性はあります。そのため、複数枚配分銘柄を狙うという戦略は、部分的には有効かもしれません

 

②「我慢」した方が価値が高くなる:期待利益が非常に大きい銘柄に使う

 IPOチャレンジポイントは、S級銘柄に使用した方が、単価も高くなる傾向があります。

 もし人々*2が「期待利益から計算すると1000ポイント出してでも欲しい」と思っていたとしても、1000ポイント出せる人は(たぶん)いません。そうすると、実際のボーダーは450とか400になり、「期待利益に対して必要なポイントが少なくなる」、つまり比例関係が崩れ、「お得になる」可能性があります。

 一方で、「期待利益から計算すると200ポイントなら出してもよい」と思った時、200ポイント出せる人は結構います。したがって、ボーダーラインは200ポイントになります。この場合、期待利益と必要なポイント数の比例関係は保存されます。

 まとめると、期待利益がものすごく高い銘柄では、理論的に必要なIPOチャレンジポイントはとても高くなりますが、実際にそんなにポイントを持っている人はほとんどいないので、ボーダーラインは下の方で決まります。その結果、IPOチャレンジポイントの「単価」が高くなります(=「お得になる」)。だから、できるだけ期待利益が高い銘柄(一発100万円以上の利益が出るような銘柄)を狙うというのは、有効な戦略です

 

③SBIへの配分枚数が多い銘柄を狙う

 人々が「使ってもよい」と思うポイント数は、期待利益に比例するとしても、配分枚数には比例しないと思われます。配分枚数を考慮して必要なポイント数を計算する人は(いるとしても)極めて少ないでしょう。したがって、SBIへの配分枚数が多い場合、必要ポイントのボーダーは当然下がります。極端な例では、ソフトバンクのIPOではボーダーラインは0P(全プレ)でした。もっとも、この銘柄は公募割れしましたが。

 したがって、もし「初値高騰が期待できる中型or大型銘柄」で「SBIが主幹事」になった場合、期待利益から理論的に計算される必要ポイント数よりもかなり下でボーダーが決まる可能性があります。ただ、SBIが主幹事になるのは小型銘柄が大半ですので、こうした案件は極めて稀です。

  

3.IPOチャレンジポイントは「インフレ」する

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 近年、SBIのチャレンジポイントはインフレが進んでいます。つまり、同じような銘柄であっても必要ポイント数が多くなっているのです。

 現在S級IPOの当選には400ポイント(※2018年12月の「リンク」の場合)ほど必要です。2017年12月の同じような案件(※「イオレ」と「みらいワークス」)では、300ポイント弱でした。2016年11月の「エルテス」では250ポイント程度、2015年の「ダブルスタンダード」では210ポイント程度だったようです。

 2018年は10月頃にキャンペーンで大量に(約50ポイント)プレゼントされたことを考慮すると、非常に大雑把な計算ですが、毎年50Pずつ程度必要ポイント数(ボーダーライン)が上昇していると言えます。一方、SBIが幹事になるのはだいたい80社程度で、1年間にたまるポイント数は80P程度です。

 このインフレ状況が続くとした場合、あなたが今150P持っていて、今300Pになっているような銘柄に当選したいのであれば、

計算式は

(300-150)÷80=2年弱

ではなく

(300-150)÷(80-50)=5年

となります。

 

 このようにインフレが進むのには理由があります。「IPOチャレンジポイントで当選する人の数」はあまり変化していないにもかかわらず、「IPOチャレンジポイントに参加する人」の数が増え続けているからです。

 SBI証券の決算発表によると、SBI証券の口座数は1年間に+7.5%(=30万口座!!)程度のペースで増加しています。IPOチャレンジポイントの性質を考えると、IPOチャレンジポイントに参加する人の数も毎年7.5%かそれ以上のペースで増えていると考えられます。

 たとえて言うならば、IPOチャレンジポイントの仕組みは、

「行列にならぶと、前の方の人から順番に、決まった時間に一定人数だけお金をもらえる。お金をもらった人は行列の最後尾に並び直す」

 というゲームです。参加者が増え続けると、行列に並ぶ時間は長くなります。口座数の増加=行列に並ぶ人の増加で、当選に必要なIPOチャレンジポイント数=行列に並んだ時間の長さです。だから、IPOチャレンジポイントがインフレするのは当然のことです。

 

4.スミスの方針

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 スミスは、現在220ポイント程度保有していますので、次にS級銘柄に当選できるのは単純計算で6年後くらいという計算になります。インフレ率は少し過大に計算しているかもしれませんが、それでも数年かかることは間違いなさそうです。いまからSBIに口座を作る人は、どれほどかかることでしょうか。

 以上のようなことを考慮して、スミスは「S級銘柄」を狙うというこれまでの方針をあきらめました。というか、インフレがあまりにもひどいので「SBIには付き合ってられないな」というのが正直な印象です。今後、参加者のさらなる増大によって、インフレの度合いが加速すると思われ、よしんばインフレの度合いが緩やかになったとしても、デフレに転ずる可能性はゼロと言っていいでしょう。

 スミスは、他の人にIPO投資として、以前からSBI証券を勧めてきませんでしたし、今後もしません。保有ポイントとNISAを使いきり次第、SBIとのお付き合いを縮小しようと考えています。スミスは資金が潤沢ではないので、SBIから撤退するといろいろと都合がよいという理由もあります。

 スミスは、今後「SBI主幹事」で「複数枚配分が期待できる」「配分枚数の多い」「A~B級」銘柄のIPOが現れた時を見計らって、全ポイントを使用し、その後はSBIチャレンジポイントを主な目的としたBB参加は全てやめようと思います

 

 以上の判断はスミスの独自の見解です。チャレンジポイントの制度で「いつかは当たる」というのは確かなので、コツコツ申し込み続けるのは無駄ではありません。ただ、いつかと言っている間に「われわれはみんな死んでいる」なんて事態になりませんように*3

 

(3/8追記)

 SBI主幹事のミンカブ・ジ・インフォノイドで232Pを投入し、当選しました。ボーダーはまだ判明していませんが、おそらく200Pよりは高いようです。

 IPOチャレンジポイントの人口分布はたぶんこんな感じになっているのだと考えていましたが、中型(S級銘柄より当選枚数10倍近い)かつB級銘柄(S級銘柄目当ての人は申し込まない)でこの結果でしたので、どうやら間違っていないようです。

400P:●○
300P:○○○○○○○○
200P:○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

  左上の人から順番にS級銘柄に当選していきます。これくらい貯めている人は、おそらくSBIで毎回毎回申し込んでいるので「順番ぬかし」はできません。

 毎年1つの○の分だけS級銘柄に当選するとします。すると、今200Pしか持っていない人が当選するのは、何年後ですか?

 もちろん、この分布はあくまで仮想的なものですが、毎年80Pは貯まるのに、ボーダーが50Pずつ上がっていくということは、流出する(当選する)人の数よりも、流入する(前回の抽選時に必要だったポイント水準に新たに到達した)人の数の方が圧倒的多いということです。したがって、この図のようにピラミッド型の分布になっていると考えるのは理屈にかなっていると思われます。

 ミンカブ・ジ・インフォノイドの結果からわかったこと、それは、少なくとも200Pくらい持っている人は「ざらにいる」ということです。S級銘柄狙いでポチポチ申し込んでいる人は、よく考えた方がいいかもしれません。

 

 ただ、今後方針が変わる可能性もあります。SBIがセット枚数を変えるという可能性です。現在、S級銘柄でも2枚~3枚セットで配られることがほとんどです。あまりにもインフレがひどくなってきた場合、SBI証券は、これを1枚セットに変更する可能性があります(そうしないと、いつまでたっても当選できないことに皆が気づいてしまう)。ただ、その場合は期待利益は当然低下しますので、手放しで喜んでいいとは言えません(一回もあたらないよりはましですが…。)

 

 スミスはもうミンカブ・ジ・インフォノイドで全部使いましたが、もしスミスが今200Pくらい持っているとしたら、次のSBI主幹事の中型で高騰しそうな銘柄(B級~)か、東京メトロみたいな超大型銘柄に使うと思います。そういう方法もあるのだ、と思っておくといいかもしれません。

 

 

 皆様もSBIとのお付き合いはよく考えた方がいいかもしれません。何かの参考になれば幸いです。

 

 

 

 

 今回はこれくらいで。それでは、また。

                             J.S.

 

*1:チャレンジポイントを貯めたければ、IPOチャレンジポイントを使わずに100株申し込む、という方法はあり得ます。

 そうそう、購入する気がないのにIPO抽選に参加するのはだめですよ。でもSBIは当選辞退にペナルティはありませんから、当選してから「気が変わったので辞退する」のはいいんじゃないですかね(白目)

*2:完全合理的かつ正確に利益を予想できると仮定します

*3:「死んでいる」(=50年60年かかる)はちょっと言い過ぎですが、10年以上かかるような行列に並ぶのは、バカバカしいといえるかもしれません