【IPO研究】ミンカブ・ジ・インフォノイドは全力参加?――過去の銘柄との比較分析
ミンカブ・ジ・インフォノイド(4436)は、東証マザーズ上場予定の中型案件です。SBI主幹事の案件は初値が高騰しやすい傾向がありますが、それは「SBIが小型案件ばかりで主幹事になっているから」とも考えられますので、必ずしも安心できるとは言えません。
仮条件提示後と、BB終了前日に改めて参加態度を決めるつもりですが、まずは予備的考察をば。
- 1.なぜスミスはミンカブ・ジ・インフォノイドに注目するのか?
- 2.SBI主幹事の中型以上の案件の実績は?
- 3.近年の話題盛り上がり系IPOの実績は?
- 4.SBI主幹事だと初値売りが多い=下振れ圧力になるのでは?
- 5.まとめ
1.なぜスミスはミンカブ・ジ・インフォノイドに注目するのか?
まず、ミンカブ・ジ・インフォノイドは、久々の「当選期待が高く利益も期待できる」おいしい案件になりそうです。公募割れの心配は小さいと思いますので、全力参加するつもりです。配分枚数次第ですが、少なくとも、楽天、SMBC、MUMSS、みずほ、内藤、藍澤から参加予定です。
それだけなら話は簡単で、何も考えずに全力参加すればいいのですが――スミスは、SBIのIPOチャレンジポイントを使用するかどうかで迷っています。というのもSBIのIPOチャレンジポイントは、キャンペーンを除いても毎年50P以上のインフレが進んでいて、年間80件申し込んでも実質的には30P分しか増えていないという現実があるからです。
IPOチャレンジポイントは、数年かけてポイントを貯め、S級IPOをゲットするというのが最も確実かつ有効な使い方なのかもしれません。しかし、2018年12月のS級IPOの当選に必要なポイントは400ポイントを超えました。これに当選する人は、2015年11月の日本郵政上場あたりから申し込み続けていた人です。スミスの実感として、郵政三社の上場あたりから、明らかにIPOの人気が過熱化しているように感じます。したがって、このあたりのポイントを持っている人はかなりたくさんいる、つまりダンゴ状態で、今後ますますボーダーは上がっていくことが予想されます。
このようなインフレが続き、SBIの主幹事数が飛躍的に増加したりしない限り、近いうちに、SBIのIPOチャレンジポイントで当選するためには少なくとも5年くらい申し込み続けないといけないというような状態になると考えられます。
そのため、スミスはIPOチャレンジポイントの「逃げ道」を模索しています。その逃げ道となりうるのは、「SBI主幹事」で「当選枚数が多く」「初値高騰が期待できる」銘柄です。ミンカブ・ジ・インフォノイドには、その可能性があります。スミスがこの銘柄に注目するのは、そういう関心のためです。
2.SBI主幹事の中型以上の案件の実績は?
先ほども述べたように、SBI主幹事の案件は、ほとんどが小型案件で、SBIへの配分枚数も、2000~5000枚程度のことが多いです。最近でSBIへの配分枚数が10000枚以上になったケースとしてはソフトバンク(共同主幹事)とSBIインシュアランス(副幹事)がありますが、両社とも初値は公募価格以下になりました。
SBI主幹事で比較対象になりそうなのは、アイモバイルだけ
もう少し遡ると、2016年のアイモバイル(6535)のIPOがあります。この案件は吸収金額約79.3億円と、マザーズとしてはかなり大型の案件でした(ミンカブ・ジ・インフォノイドは吸収金額30.3億円です)。2012年以降のIPOで、SBIが主幹事となった中型以上の案件はこれだけです。
アイモバイルは公募価格1320円に対して、初値1230円と公募割れになりました。
結論から言うと、SBI主幹事の中型案件は戦績がよくないです。
3.近年の話題盛り上がり系IPOの実績は?
とはいっても、ミンカブ・ジ・インフォノイドはアイモバイルと比べると明らかに話題性が高いです。話題性というとソフトバンクの方が高いですが、吸収金額は2.6「兆円」と歴代最高額のIPOでしたので、ソフトバンクが話題性が高いからといって、お祭りになって高騰というのは、いくら何でも不可能でした。この辺りは以前に考察しました。
IPOは本質的に「お祭り」です。つまり、「IPOは上がるとみんなが思っているから上がる」という構造があるのです。IPOは上がると考える人々が、セカンダリで参加してくれるおかげで、初値が高騰します。
したがって、ミンカブ・ジ・インフォノイドが「セカンダリ参加者にとってどの程度魅力的であるのか」が重要です。これまでのスミスの経験から言うと、このセカンダリ参加者たちは、基本的にPERとかは見ず、成長性、話題性、新規性を重視しています。地味優良系の銘柄は、セカンダリでは評価されず、さらに数ヶ月経ってからやってくる参加者(ターシャリ参加者と呼ぶことにしましょう。バリュー投資家が多いです)が買っていく中で、じわじわ上がることが多いです。
つまり、セカンダリで評価されるのは成長性、話題性、新規性がある銘柄で、そうでない銘柄は、ある程度規模が大きくなると、割安であっても苦しい傾向があります(例えば、信和、QBネット、アルテリア、ナルミヤ、ワールドなど)。逆に言うと、成長性、話題性、新規性がある銘柄は、多少規模が大きくても何とかなることがあります。
ミンカブ・ジ・インフォノイドに近い話題性(親近性)と成長性を持った銘柄として、近年では、メルカリ(吸収金額1067億)、マネーフォワード(吸収金額39億)、LINE(吸収金額1127億)などが挙げられます。これらの銘柄はかなり大型でしたが、最も低いLINEでも公募価格比で40%近く上昇しました。
つまり、「お祭り」になれば、多少金額が大きかろうと、多少売り玉が多かろうと、問題なく初値は上がっていくと考えられます*1
4.SBI主幹事だと初値売りが多い=下振れ圧力になるのでは?
総合的に考えて、最も参考になりそうなのは、2017年のマネーフォワードのIPOです。
この案件は吸収金額39億円で、ミンカブ・ジ・インフォノイドの30億円よりひとまわり大きいです。皆に知られたネット系サービス(数百万人の利用者、有料サービスによる収益システム)で、高い業績の伸び、1.5倍で外れるVCのロックアップなど、かなり共通点が多いです。マネーフォワードの初値は、公募価格1550円に対して、初値3000円でした。業績に関しては、ミンカブ・ジ・インフォノイドは黒字化しているという点で、むしろマネーフォワードより評価できると思います。
気になるのは、主幹事の違いです。マネーフォワードはSMBC(74%)とマネックス(18%)が共同主幹事でした。それに対して、ミンカブ・ジ・インフォノイドはネット証券のSBIが主幹事で、配分はおそらく80%以上になると思われます。
ここで心配なのは「SBI主幹事だと初値売りが多くなるのではないか」という懸念です。SBIは短期参加者が多いことはスミスもしばしば指摘しています。
気になって調べてみたところ、意外なことが分かりました。
以下の指標を定義します。
初値放出率=(初値が形成された1分間の出来高)/(公募株数)
初値形成の1分間での出来高なので、厳密には初値売りした割合とは若干ずれますが、おおむね「公募株のうち初値売りされた株数の割合」と一致すると考えて良いです*2
そして、マネーフォワードの初値放出率は「約80%」でした。これは、2018年12月でSBI主幹事だったリンクとほぼ同じ程度の割合です。
ほかの銘柄も調べてみましたが、初値の高騰と初値放出率には相関があると言えそうでしたが、主幹事と初値放出率が相関しているとは言えなさそうです。実際、SBI主幹事であっても、アイモバイルの初値放出率は35%程度しかありませんでした。
以上のことから言えそうなのは「抽選でもらった人と裁量でもらった人は、少なくとも初値が高騰するような銘柄では、初値放出率では大きな差がない」ということです*3。
5.まとめ
SBI証券の公募組が、SMBCなどの裁量組とあまり変わらない挙動をするのであれば、ミンカブ・ジ・インフォノイドは、マネーフォワードとほぼ同じように高騰しうると考えられます。ただ、若干IPOの市況は変化しているのと、同時上場が2社あるのはマイナスになりそうですが、30億円程度の「お祭り」を引き起こす力を、ミンカブ・ジ・インフォノイドは持っていると思います。
最後に、非常に個人的な意見ではありますが、ミンカブ・ジ・インフォノイドは成長性や新規性など、スミスの目から見て「保有したい」です。規模が大きいながらも、メルカリやLINEに近い「ワクワク感」があります。IPOでは、この「ワクワク感」は大事だと思います*4。確かにVCが多いのは気になりますが、VCは別にIPO参加者をいじめたいわけではなく、ただ、自分が得をするようにふるまうだけでしょうから、例えばVCが今後の業績悪化を知っていて売り逃げしようとしているのでない限り、つまり、確信犯的に「上場ゴール」を狙っているのでない限り、VCもこうした成長性のある企業をいきなり全株手放したりはしないと考えます。
というわけで、スミスは現在のところ、この銘柄はかなり人気化すると考えており、マネーフォワードと比較しても、控えめに言っても初値が+50%以上になる蓋然性はかなり高いと思われます。スミスは、IPOの市況が十分温まっていれば、マネーフォワードと同じ+90%程度も十分可能と予想します。
ミンカブ・ジ・インフォノイドは、3枚セット配分になると思われますので、チャレンジポイントで当選すれば、利益は15万円~25万円程度になるでしょう。スミスは、これなら「割に合う」と思いますので、今のところIPOチャレンジポイントを全てつぎ込む予定です。
以上、スミスの考察でした。
今回はこれくらいで。それでは、また。
J.S.